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ウンベルト・エーコ『バウドリーノ・下』

懸賞 2011年 03月 23日 懸賞

f0179663_1853324.jpgここ10日ほど読書どころではなかったのですが、ようやく下巻を読了。

第4回十字軍の暴徒が跋扈するコンスタンティノープルから脱出するビザンツ帝国高官のニケタス・コニアデスに同伴することになったバウドリーノ。道中、自分の数奇な運命を引き続きニケタスに語る。

バウドリーノは義父の神聖ローマ皇帝フェデリーコの第3回十字軍遠征に加わることになった。十字軍遠征に志願してきた故郷アレッサンドリアの旧友たちとも再会し、パリの遊学時代からの友とともに東方を目指す。もちろん、彼らの最終的な目的地は聖地エルサレムではなく、伝説の司教ヨハネの王国だ。
ところが、遠征軍が小アジアまでたどり着いた時に、義父のフェデリーコが謎の死を遂げる。自分たちに皇帝の死の嫌疑がかかるのを逃れるため、バウドリーノ一行は十字軍から離れ、司教ヨハネの王国を目指して出発する。

一行は、バジリスク、マンティコア、キマイラなどの数々の怪物と遭遇しながら、触れると全身が真っ黒になる石が川床に広がっているブブクトル川、ギリシャ語を話す裸形者(ギュムノソフィスタイ)の村、真っ暗闇のアブハジアの森、轟音を響かせながら大小の石が転がるサンバティオン川を越えて旅を続ける。
長い旅の末、ついに司祭ヨハネの息子の助祭ヨハネの属州プンダペッツィムに到達する。そこには一本足のスキアポデス族、頭のないブレミエス族、巨大な耳を持つパノッティ族、舌なし族など、さまざまな異形の民族たちが共存していた。彼らはみなキリスト教徒なのだが、それぞれが神学的にお互いを「悪く考える=異端」とみなしている。しかし、共通の敵として、いつの日か凶暴な騎馬民族白フン族が攻めてくる、と信じていた。
バウドリーノたちは司祭ヨハネに使いを送るが、いつまで待っても返事は来ない。使者が司祭ヨハネの王国にたどり着いたのかどうか、そもそも司祭ヨハネの王国が本当に存在するのかどうか、それすらも次第に彼らにはわからなくなってきた。

そんなある日、暇をもてあまして町の外に出かけたバウドリーノは、森の中の湖のほとりで一角獣を連れた美しい貴婦人ヒュパティアに出会い、たちまち恋に落ちる。
しかし、とうとうプンダペツィムに白フン族が襲来した。

バウドリーノ一行とプンダペッツィムの住民たちの白フン族との戦い、脱出、そして彼らは司祭ヨハネの王国へ行くことはあきらめて、再び西方へと長い旅に出る。
多くの仲間を失いながら、コンスタンティノープルにようやくたどり着いたのが、ちょうど1204年。混乱するコンスタンティノープルでバウドリーノは義父フェデリーコを殺した犯人と決着をつけた直後にニケタスに出会ったのだった・・・。


北イタリアとドイツを舞台にした歴史的叙述の多かった上巻から一転して、下巻では数々の伝説の怪物や異形の人々が登場するファンタジー作品となっています。
しかし、異形の民族がそれぞれ信奉する「異端」は、まさにキリスト教の神学論争の核心を突いており、特にヒュパティアの語る神学的説明は実に難解です。このあたりはさすがエーコ作品といった感じで、ただの娯楽小説とは一線を画しています。

とはいえ、聖杯伝説、三賢王伝説、十二使徒、聖遺物、十字軍、一角獣を連れた貴婦人というモチーフ、数々の怪物、そして中世における知識=神学など、物語全般で中世という時代の人々のメンタリティをうまく表しています。
また、皇帝フェデリーコの死の謎、バウドリーノと仲間たちの友情や、エーコ自身の故郷であるアレッサンドリアの町に伝わる伝説も描かれ、いわば奥の深い知的歴史ファンタジー作品として、とても楽しく読みました。

by ciao_firenze | 2011-03-23 19:08 |

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