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『三十棺桶島』

懸賞 2010年 09月 20日 懸賞

『三十棺桶島』_f0179663_1535441.jpgずいぶん前から営業していたらしい藤沢のジュンク堂書店に初めて行きました。専門書の充実っぷりは、都心の大きな書店もビックリ。最初はハードカバーの歴史関連書籍や語学参考書、美術書のコーナーを見て喜んでいたのですが、文庫の階に行ってみたら、これまた在庫の多さに仰天。岩波文庫がここまで揃っている書店はそうそうないのでは?
と、面白がっていたところ、「ポプラ文庫クラシック」シリーズを発見。なつかしい「怪盗ルパン」シリーズが並んでいました。モーリス・ルブラン原作、南洋一郎翻案のシリーズは、表紙も挿絵もそのままの復刻版です。
小学校3,4年ごろに、学校から借りてきて何冊も読みましたが、その中でも忘れられなかったのが『三十棺桶島』。

ある女性が映画の中で、自分自身の少女時代のサインが書かれた小屋を見つけて仰天する。現地に行ってみると、小屋の中にあった老人の死体が握りしめていた残虐な絵のモデルはあろうことか、彼女自身。その絵のナゾの言葉に導かれて、不吉な伝説に満ちた「三十棺桶島」という孤島に渡ると、待ち受けていたのは信じがたい光景だった・・・。

「フランスにはパリという町がある」ということをルパンシリーズで覚えた数十年前の小学生にとって、三十棺桶島のあるブルターニュ地方はいったいどこなのか、などという地理感はまったくなし。
それでも一度も行ったことがない遠く離れた田舎の小屋に自分のサインを見つけたときの恐怖は確かに感じ、あまりの怖さにこのイントロ部分だけは忘れがたいものとなっていたのでした。
でも、人を生かしたり殺したりするという不思議な力を持つ「神の石」をめぐる悪者とルパンの戦い、という肝心のお話の本筋はすっかり忘れていました(爆)。

今読み直してみると、不吉な伝説に満ちた絶海の孤島での連続殺人は、まさに横溝正史の世界。やがて登場する怪盗紳士ルパンのあまりのスーパーマンっぷりは007モノみたいなトンデモ話だし、地底の怪老人が登場するあたりは、いかにも子供向けという感じ。
しかし、有史以前の巨石文化にかかわるケルト人の伝説が絡んでいるからこそ、ブルターニュ地方が舞台なのだということがやっとわかりました。

第一次大戦後に書かれた小説の翻案モノなので、どれだけ古臭いかと思ったけど、ルパンは自前の大きな潜航艇を自分で作ったり、「神の石」の不思議な力を科学的に研究してこの世のために役立てよう、というあたりは、なかなかの技術者だったんですね(笑)。

全体に思ったほど古臭い感じがしなくて、懐かしさでいっぱいになりました。今でも読むのが遅い私が2日かかったので、イントロ部分から恐怖に震えて手に汗握っていた10歳ぐらいの小学生にとっては、さぞかし大作だっただろうなぁ、と思いました。

というわけで、『英雄三国志』からまたまたちょっと寄り道でした。
そして手元には塩野七生の『十字軍物語』の1巻と、浅田次郎の『中原の虹』の文庫版2冊が届いてしまい、忙しくなりそうです。

by ciao_firenze | 2010-09-20 16:10 |

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