『トロイメライ』

懸賞 2011年 06月 15日 懸賞

f0179663_7585975.jpg池永光一『トロイメライ』を読了。

18世紀半ばの琉球王国。新米の筑佐事(ちくさじ=岡っ引き)武太(むた)は、捕り物の腕はまだまだだが、三線弾きと唄が自慢で、人情味あふれる筑佐事になることを目指して今日も那覇の町を駆け回る。

困窮のあまり一族の墓を売ってしまい、詐欺の罪で流刑になる落ちぶれ士族の妻の話、貧しい庶民を助ける義賊の話、わずかな金額で売られていく貧農の子供たちの話、100年以上前から行方不明の王宮の至宝の三線を巡る話、詐欺で訴えられる高級遊女の話、身寄りがなく一族の墓に入れなくなってしまったオバァが近所の人たち大勢に野辺送りされる話、の6つの短編からなっています。

『テンペスト』の外伝(スピンオフ)。『テンペスト』では首里の王宮を中心とした世界を描いていましたが、こちらは那覇の町の庶民の見た悲喜こもごもを描いた作品。武太の幼なじみの三姉妹がもり立てている宿屋が主な舞台なので、おいしそうな料理の描写も食欲をそそります。
また、三線を弾くだけでぶらぶらしていた武太に筑佐事の仕事を口利きしてやった涅槃寺の住職大寛長老は、かつて王宮の官吏だっただけあって顔が広いのですが、そこも各ストーリーの要となっています。
そして、『テンペスト』の主人公の評定所筆者孫寧温、部下の喜捨場朝薫、兄の花匂嗣勇、女官大勢戸部、銭蔵奉行の多嘉良、後に王の側室になる真美奈などの、おなじみの人物も1話に1人ずつ、ちらっと出てきて物語に奥行きを加えています。

あまりのメチャクチャなストーリー展開にちょっと唖然としてしまった『テンペスト』でしたが、琉球王国時代の庶民の日常を人情味あふれる視点で描く、という点からも、マンガやライトノベルのような軽い語り口も気になりませんでしたし、むしろ外伝の『トロイメライ』の方がおもしろかったです。どうやらシリーズものになりそうな感じ。最近出版されたばかりの続編も早速購入しました。
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by ciao_firenze | 2011-06-15 08:31 |

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