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『罪と罰 3』

懸賞 2009年 12月 24日 懸賞

『罪と罰 3』_f0179663_2152128.jpgあまりにばたばたしていて、書くのを忘れていましたが、ドストエフスキーの『罪と罰』を全巻読了しました。
時間が経ってしまって、詳細な感想を書く気力が減退してしまったというのが正直なところです。
が、一応今年のうちに読んだ本ということで、簡単にまとめておきます。

ラスコーリニコフの分身のスヴィドリガイロフは自殺を選び、そこに「救い」はありませんでしたが、それに対して、ラスコーリニコフは、死罪に等しい20年のシベリア流刑になると思っていたのに、第二級強制労働8年の刑となります。そして彼の刑地についていき、他の囚人たちにも慕われ、ラスコーリニコフの世話をするソーニャ。2人の姿で物語は終わります。
やはりソーニャはどこまでもマグダラのマリアを彷彿させ、まだ寒さの厳しい早春のようにほのかでありながら、「救い」が感じられます。このあたりが『カラマーゾフの兄弟』とは違う明るさを帯びた終わり方だと思いました。

しかし、「訳者あとがき」に亀山氏が以下のように書いています。

『罪と罰』の翻訳を終えたわたしの念頭から、どうしても去ろうとしない一行があった。それは、予審判事ポルフィーリーの次の一言である。
「あのばあさんを殺しただけですんでよかった。べつの理屈でも考えついていたら、一億倍も醜悪なことをやらかしていたかもしれないんです!」


このセリフは、私も妙に気になっていました。「一億倍も醜悪なこと」って何だろう?
ロシアの研究者ベローフによると、「故国を"叩き割る"」ということらしいです。つまり、「ロシアをぶっ壊す」ということ。
老女殺しの場面が連載されたのは1866年1月で、その3ヵ月後には、皇帝アレクサンデル2世暗殺未遂事件が起こります。ロシア帝国末期のテロの時代の幕開けでした。
まさにこれは『カラマーゾフの兄弟』の「父殺し=皇帝殺害=ロシアを叩き割る」ことにつながります。
明るさを感じる『罪と罰』の中にも、終末(革命)へと向かっていく帝政ロシアの時代の雰囲気がしっかりと生きているということを感じました。

混乱の19世紀末、神なき時代、帝政末期のロシア。ドストエフスキーの『悪霊』『白痴』も読んでみようと思います。

by ciao_firenze | 2009-12-24 21:49 |

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